メディア学科卒・エンタメ大好き女子が独自の視点で書き綴ります✎☡ 𓂃𓈒𓏸(記事中敬称略させて頂いております)

【ドラマコラム】『失恋ショコラティエ』を観たことがないからモテない

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失恋ショコラティエを観たことがないからモテないんだよ」

 

 高校時代にハンバーガーショップで隣に座っていたお姉さんの言葉が、今でも印象に残っている。隣に座っていたのは三人組。そこでは、「彼氏欲しい~」「てかまず私モテないし!」という女子特有の『モテないマウンティング』が繰り広げられていた。そこでマウンティングに乗らず、「失恋ショコラティエを観たことがないからモテないんだよ」という爆弾発言を投下したお姉さんは、今頃その二人とは確実に縁が切れているだろう。なぜ、二人が失恋ショコラティエを観ていないと決めつけたのかもよく分からない。

 

 嵐のドラマを観ないと次の日の話題についていけないというほど、全盛の嵐ブームだった私の高校時代。もちろん、嵐のドラマはきちんとチェックしていた。しかし、『モテ』目線では観ていなかった。松本潤さん演じるショコラティエの小動爽太が一途でカッコイイだとか、溝端純平さん演じるオリヴィエ・トレルイエが可愛いだとか、そんな所ばかりに目が行ってしまっていた。

 

 そのお姉さんの爆弾発言を聞いた時、まだドラマの放送は1話だったため、私は、『モテ』目線で失恋ショコラティエを観ることにした。石原さとみさん演じるTHE小悪魔モテ女紗絵子の行動を見て、勉強を重ねた。

 

 私の恋愛観を一番変えたのは、水川あさみさん演じる薫子と爽太の会話。ちなみに薫子は、紗絵子とは対角に位置するキャラクターだ。「爽太くんが紗絵子さんのこと、いつまでも好きでいられるのも、正直不思議だと思ってるよ。いかにも男ウケ狙ってますっていうの分かってて、なんで冷めないのかな」と言った薫子に対して、爽太は、「いや、だって見え見えだから可愛いんじゃん。見えなかったら可愛いって思えないよ。男って鈍いからさ、見え見えぐらいがちょうどいいんだって」と返した。その台詞を聞いた時、私は衝撃を受けた。見え見えだから可愛い?だけど確かに、「見えなかったら可愛いって思えない」のは事実だ。女は、同性が男に媚びたり、ぶりっこをしているのを見た時、「バレバレなのに何やってんの?」と思ってしまう。ただ、男からしたら、そのバレバレなのが可愛いらしい。

 

 それから私はほんの少しだけ、バレバレのアピールをするようになった。相手が10分後に来たから、こっちも10分置いて…などというメールの駆け引きもやめた。紗絵子が、「私は返したい時にすぐ返しますよ。返事が遅れて喜ぶ人はいないだろうし」と言っていたからだ。

 

 結果、『失恋ショコラティエ』により、私の恋愛観は大きく変わった。変なプライドは損をするだけ。好きな人には、きちんと好きですアピールをする。それから、一気にモテ始めた…かは分からないが、恋愛をするのが楽しくなった。

 

 まだ、『失恋ショコラティエ』を観たことがない人には、ぜひ観て欲しい。誰かに、「失恋ショコラティエを観たことがないからモテないんだよ」と言いたくなるはずだ。…言うか言わないかは別として。

【ドラマコラム】究極の二択の連続『朝ドラエール』恋愛は人を強くするのか?

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 これまで、裕一の音楽家になるまでの過程や、音の歌手になりたい理由などがフューチャーされていた『エール』。しかし、音が裕一にファンレターを送ったことから、二人は恋に落ちる。「恋」と「夢」の狭間で揺れる二人の姿が印象的となってきた。第6週ではそれが顕著となり、二人の恋路にさまざまな試練が襲う。

 裕一は、ロンドン留学を控えて夢に向かってまっしぐらだったはずだった。しかし、音と出会い、次第に恋にのめり込んでいく。裕一が度々訴える、「音がいなければ曲が書けない」という言葉。音がいなくても曲を書けていたはずなのに、どうして恋をしたら、音なしでは戦えなくなってしまうのだろう。

 現実にも、このようなことは起こりうる。一人でも生きて来られたはずなのに、誰かと出会って恋をする。その相手と別れた瞬間、どうやって生活してきたのかも分からないほどになってしまう。そう考えると、恋は人を強くするものなのか、弱くするものなのか分からない。

 裕一は、類い稀な才能を持っているはずだった。小さい頃から、どんどん曲を書いていたはずだ。しかし、音と出会ってからの裕一は、音と上手く行かなくなると、「あなたがいないと曲が書けない」と言うほど弱くなってしまう。音がいたから曲を書けた訳ではないのに。裕一は、音と出会って、強くなった訳ではない。むしろ、音と出会ったから弱くなれたのかもしれない。自分一人で戦っていたものを、音の存在が支えとなって、弱くなれた。しかし、それに慣れてしまうと、再び相手がいなくなった時に、その荷物を一人で抱えられなくなってしまう。裕一は、その状態に陥ってしまったのだろう。そうなると、音がいなくなることに、恐怖心を抱えてしまう。絶対に切れない約束が欲しい。そう思って結婚に踏み切ったのかもしれない。

 結婚を反対する、裕一の母の気持ちも、とてもよく分かる。「外国に音楽を勉強しに行く。そこに結婚は必要?」というのも、真っ当な問いかけだ。「力の源なんだ」と返した裕一の気持ちも分かる。音のことを批判され、「唯一信頼できる人なんだ」と言ってしまった裕一が、なんともリアルだ。それに、「唯一って何だよ。家族のことは信用していないのかよ。周りの愛を当たり前だと思うなよ」と母が言えない気持ちを代弁した弟も、良かった。また、裕一が音楽の道へと進むきっかけを与えた藤堂先生の「本気で何かを成し遂げたいなら、何かを捨てなければならない」という言葉は、恋愛で染まっている裕一の頭の中を、一気に現実へ引き戻したんだろう。

 その言葉を受けて、裕一は音へ「別れてください 夢を選びます」と別れを告げた。

 「夢」と「恋愛」。恋愛は、夢を追う上での支えとなるのか?それとも、足かせとなるのか。当の本人は、支えとなっていると思い、周囲の人は、足かせになっていると感じると思う。つまり、この時、裕一以外の人は、恋が夢に突き進むための障害であると考えていたのだ。しかし、その障害を乗り越えるために必要だったのもまた、音からの愛だった。音との出会いによって生じてしまった障害を乗り越えるために音が必要だと考えると、一見矛盾しているように思えるが、恋愛とはそういうものなのかもしれない。

【スマホ世代が分析】『M愛すべき人がいて』ドラマ挿入歌 平成の歌姫「浜崎あゆみ」がMへ綴ったラブソングの数々 

 歌姫の暴露本とも言われた、『M 愛すべき人がいて』が発売されて半年以上が経った。ドラマ化や、バラエティ番組で取り上げられるなど、歌姫の秘められた恋は、未だにムーブメントを巻き起こしている。

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 デビュー曲の『Poker face』から、19枚目のシングル『M』までのほとんどが、max matsuuraことMに送られたラブレターだったということが明らかになり、曲を振り返ると、なるほど!となる箇所がたくさんあった。ドラマ内で挿入歌として使用された歌たちを中心に、振り返っていく。

 

1.pocer face

 
浜崎あゆみ / poker face (Short Ver.)

1998年に発売されたデビュー曲。様々なタイアップが組まれ、大きな注目を集めた。

 【いつだって泣く位簡単だけど笑っていたい】

当時のインタビュー記事には、「泣いてもいいよ あゆが代わりに笑ってあげるから」という言葉が綴られた。「泣きたくない」「笑っていたい」という感情を、ただ単純に表すのではなく、「泣く」ことは簡単でラクなこと。ずっと笑っているのは、疲れるかもしれないけど、それでも私は笑っていたいという意思表示のようにも感じる。

【他には何も望まないからたったひとつそれだけでいいあなたの愛が欲しいよ】

この部分は、Mに向けて送った言葉出会ったことがドラマ内で明かされた。祖母の死で絶望の淵に立たされたあゆが書き上げたデビュー曲。その絶望を救ってくれたのは、歌であり、Mだったのかもしれない。

 

2.YOU


浜崎あゆみ / YOU (Short Ver.)

1998年6月10日発売。デビュー曲『poker face』に次ぐリリースシングル。前作のわずか2ヶ月後に発売した。この曲で、初のMステ出演。

 【きっとみんなが思っているよりずっと キズついてたね 疲れていたね 気付かずにいてごめんね】

【そばにいるだけでただ 心が癒されていく そんな支えにいつか なりたいと願うよ】

avexのヒットメーカーとして、孤独にプレッシャーと闘っていたMへ送った歌詞のように思える。プロデューサーとアーティスト。Mは、プロデューサーだから、アーティストである自分に辛い表情は見せてくれない。そんな葛藤も匂わせる。あゆにとってMは、「そばにいるだけで心が癒されていく支え」だったのかもしれない。

 

3.A Song for XX


「A Song for ××」COMPLETE 2000-2018

1999年1月1日に発売された初のオリジナルアルバム『A Song for XX』の収録曲。あゆファンの聖歌と言っても過言ではないほど、「浜崎あゆみワールド」を体現した楽曲。

 【いつから大人になる いつまで子供でいいの どこから走ってきて ねえどこまで走るの】

【居場所がなかった 見つからなかった 未来には期待できるのか分からずに】

【人を信じることっていつか裏切られ はねつけられる事と同じと思っていたよ】

【一人きりで生まれて 一人きりで生きて行く きっとそんな毎日が当たり前と思ってた】

あゆが、寂しかった幼少期を思い出して書いた楽曲と言われている。ドラマ内では、Mに「作詞をしてみろ」と言われ、初めて作詞をした歌となっていた。問いかけから始まるこの歌詞は、Mに対する問いかけも混ざっているのかもしれない。あゆは、度々自分が歌い続ける理由について、「居場所が欲しかったから」と語っている。そんなあゆの居場所をくれたのが、「歌」であり、それを導いたのがMだったのだ。居場所がなく、未来に期待できるのか分からない若者の葛藤を歌い上げ、たくさんの共感を生んだ。

 

4.Boys &Girls


浜崎あゆみ / Boys & Girls

1999年7月14日発売の9枚目シングル。この曲で、初めて日本レコード大賞を受賞。紅白歌合戦にも初出場を果たすなど、転機となった楽曲。

 【輝きだした僕達を誰が止めることなど出来るだろう

著書『M 愛すべき人がいて』の中で、Boys &Girlsは、M&あゆのことであると明かされた。「二人で作り上げた”浜崎あゆみ”は、マサにも、あゆにも、手に負えないモンスターになってしまったね」という言葉の真意が隠されているような歌詞。二人で作り上げた”浜崎あゆみ”は、輝きだして、誰にも止められなくなっていたのかもしれない。もちろん二人にも。

【背中押す瞬間に忘れないでいて この夏こそはと交わした約束を】

【本当は期待している 本当は疑っている 何だって誰だってそうでしょ】

背中を押す瞬間は、Mがあゆのことを商品として輝くように応援していた時。そんな時にも、この夏こそはと交わした約束(著書内で、夏には二人で旅行に行こうと約束していたと明かされている)を忘れないでほしいという意味が込められているように感じる。本当は行けるはずないという気持ちと、行けると信じたいという気持ちが交差していたのかもしれない。

【「イイヒト」って言われたって「ドウデモイイヒト」みたい】

若者によくある、「イイヒト」と言われたくないホリックを素直に表現した歌詞。あゆは、時代の先駆者として、誰も成し遂げていないことにこだわっていた。「ドウデモイイヒト」になりたくないという強い信念が込められている。

 

5.appears


浜崎あゆみ / appears

1999年11月10日に発売された2ndアルバム『 LOVEppearsと同時発売の30万枚完全限定生産シングル。アルバムとシングルを真逆のイメージ展開し、「白アユ」「黒アユ」のネーミングが流行した。

 【恋人たちはとても幸せそうに手をつないで歩いているからね まるで全てのことが上手く言ってるかのように見えるよね 真実はふたりしか知らない】

Mとの別れを決意した絶望の最中に書いた歌詞であると言われている。Mステにて、『appears』を号泣しながら歌っていたことがあり、いろいろな憶測が飛び交ったが、Mとの破局直後であったことが20年後に明らかになった。

 

6.Fly high


浜崎あゆみ / Fly high

1999年11月10日に発売された2ndアルバム『 LOVEppears』からのリカットシングル。30万枚の限定生産で発売された。

 【離れられずにいたよ ずっと 見慣れている景色があったから】

【怖がって踏み出せずにいる一歩が 重なっていつからか長く長い道になって 手遅れになったりして そのうちに何となく今の場所も悪くないかもなんて思い出して 何とか自分に理由つけたりした】

Mとの決別を決意した時期に書いた楽曲なだけあって、恋人から離れたいけど離れられない複雑な乙女心が表現されている。長く付き合ったり、密度が濃いほど、別れで人生が変わってしまう。Mと出会って人生が180度変わったあゆにとって、Mとの決別は計り知れないほど大きな不安だったのだろう。スターダムに駆け上がるにつれて、プレッシャーも増える。「逃げたい」と思うことがあっても、逃げられないから、どうにか自分を誤魔化して生きて行くしかないい。『Fly high』は、そんな心情も表現されているように感じる。

【何だか全てがちっぽけで 小さなかたまりに見えたのは 仰いだ空があまりに果てしなく 広すぎたからだったのかもしれない 君のとなりにいたからかもしれない】

スターになるために大きな期待や不安を背負ったあゆ。あまりに凄いヒットメーカーとの交際により、自分に自信がなくなってしまった日があったのかもしれない。しかし、全てがどうでもよくなってしまうくらい恋に焦がれたという見解もできるフレーズ。仕事と恋愛の葛藤を見事に融合させた1曲。

 

7.M


浜崎あゆみ / M

2000年12月13日に発売された19枚目シングル。『SEASONS』以来となる初動50万枚以上を記録し、累計売上は約132万枚。

【MARIA 愛すべき人がいて 時に強い孤独を感じ だけど 愛すべきあの人に結局何もかも満たされる】

著書のタイトルともなった楽曲。Mとの決別を決意した際に作ったとされている。浜崎あゆみ第一章の閉幕。それは同時に、第二章の幕が上がった瞬間だった。タイトルの『M』は、恋人のイニシャル。

【それでも全てには必ずいつの日にか 終わりがやって来るものだから】

【今日もまた この街のどこかで 別れの道選ぶふたり 静かに幕を下ろした】

【だから祈っているよ これが最後の恋であるように】

どんなに激しく、身を焦がす恋愛をしても、いつか終わりがやってきてしまう。大失恋をした者にしか知り得ない感情を繊細に表現している。「静かに幕を下ろした」と言っているのに、「これが最後の恋であるように」と祈っている。もう、こんな恋愛はできない、これ以上好きな人に出会えないと思ってしまう、失恋直後の感情が表れている。

【理由なく始まりは訪れ 終わりはいつだって 理由をもつ…】

出会いには意味がなかったのかもしれないが、好きになって、両思いになって、喧嘩して、仲直りして…そんな毎日が終わることには、必ず意味がある。今のこの失恋の辛さも、いつか意味になるという願いが伝わる歌詞。

 

8.Voyage


浜崎あゆみ / Voyage (Short Ver.)

2002年9月26日に発売された28枚目シングル。この曲で、「日本レコード大賞」と「日本有線大賞」を受賞した。

 【僕達は幸せになるため この旅路を行くんだ ほら笑顔がよく似合う】

【色褪せる事なく蘇る 儚く美しき日々よ 眩しい海焦がれた季節も 雪の舞い降りた季節も いつだって振り向けば あなたがいた】

【何度道に迷ったのだろう その度にあたたかい手を差し伸べてくれたのもあなたでした】

Mと別れた後に出した楽曲だが、ドラマ内で挿入歌として使われていた。Mとの別れからしばらく経って、一歩引いた目線で大恋愛を懐古しているように感じる。本の帯に書いていた「自分の身を滅ぼすほど、ひとりの男性を愛しました」というほどの大恋愛を、乗り越えて、「儚く美しき日々」と言っているのが凄い。Mを題材にした曲であると考えると、「身を滅ぼすほどの恋愛でも、何年後かに思い出したら温かい思い出になるよ」とあゆが教えてくれているような気がする。

 

あゆの歌は、時を超えていつだって若者の心を救ってくれた。大好きな人ができた日、大失恋をして泣いた日。いつもあゆの歌は側で寄り添ってくれた。それは、あゆ自身が人生を懸けた大恋愛をして、傷つき、泣いて、笑って、立ち上がって、歌い続けたからなのだろう。この作品を見て、より、あゆの歌を身近に感じることができた気がする。

 

(※ドラマと本に書いてある内容を基に分析した個人の意見です)

 

 

 

【ドラマコラム】『M 愛すべき人がいて』浜崎あゆみをスターダムに押し上げたヒットメーカーMの心に響く名言たち

 平成を代表する歌姫「浜崎あゆみ」の誕生に秘められた出会いと別れの物語を原作に映像化されたドラマ『M 愛すべき人がいて』。ヒットメーカーマサと、ブレイク前のアユの恋路を追ったストーリーは、深夜帯にも関わらず初回視聴率5.6%を記録し、大きな話題となっている。

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 その中でも、三浦翔平演じるマサ専務のアユの背中を押した言葉達は、とても心に響く。「アユは、数年後、ここ(avex)にいる全員のボーナスを稼ぎ出します」や、「お前の言葉が、世の中の若い奴らの背中を押す時代が必ず来る」など、マサは、先見の明を持って、アユをスターダムに押し上げてきた。

 

「あゆは俺以外の者が磨いても石のまま。彼女は俺が磨いた時にだけ輝ける」

「ダイヤの原石がダイヤになるかは磨く人次第だ。自分は、ダイヤの原石って思ったら、その時点でそうだ」

avexに所属する前に、アユが所属していた事務所の社長に言った言葉。マサに出会う前は、売れない女優をしていたアユ。マサを出会って、歌と巡り合い、スターになったと考えると、マサとアユの出会いは、奇跡なのかもしれない。

 

「乗り越えるために入れてもらったんだ。想定内。もし、あいつが虐められているのであれば、貴重な経験だ」

ガールズグループのオーディション合宿にアユを参加させたマサ。アユがマサに気に入られていることから嫉妬に走った候補者達は、アユをいじめる。止めた方がいいか?と聞かれて、「想定内」答えたマサ。アユの闘争心を鍛えるために仲間に入れたという目論みがあったからだ。

 

「仮に五万人のファンが待ってるとして、怪我ごときで簡単に休めるか?怪我だけじゃない。家族や恋人、どれだけ大切な人がこの世からいなくなったとしても、ステージに立たなきゃいけない。アユが向かおうとしているのは、そんな場所だ」

 

「今の気持ちも、今自分が立っている場所も、全部詞にできる。だから歌は凄いんだ」

仲間からはいじめられ、大好きなおばあちゃんも病気で倒れ、ボロボロなアユにマサが送った言葉。この言葉を受けて、名曲『A song for XX』ができた。

 

 スターにのし上がるまでに、様々な試練と戦い抜いたアユ。名曲『M』誕生までの長い道のりには、専務からの力強い言葉たちが支えとなっていたのだろう。「俺は起きている間はずっとアユのことを考えている」と言ったヒットメーカーと、励ましを力に変えて過酷な世界を戦い抜いた歌姫の恋愛を超越した深い絆のストーリーを、これからも追い続けたい。

【ドラマコラム】食をテーマにしたミステリードラマ『美食探偵 明智五郎』が深い

4月12日から始まった『美食探偵 明智五郎』。『東京タラレバ娘』や、『偽装不倫』など、数々の映像化を生み出してきた漫画家・東村アキコの漫画が元になっている。中村倫也演じる明智五郎は、お金持ちのお坊ちゃん。そして、美食家な探偵。若者が好む、〈お金持ちの煌びやかな世界〉と、主婦層が好む〈食テロ〉を融合した全方位ウケのドラマだ。ミステリー要素もあるが、コメディ路線のシーンが多く、テンポもいいので、ミステリーが苦手な人でも観れる作品になっている。

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 このドラマには、「もし、明日殺されてしまうとしたら、あなたは最後に何を食べますか?」という問いかけが入る。明智五郎は、美味しいものを食べるたびに、〈最後の晩餐リスト〉にその食事を書き入れる。しかし、「これが最後の晩餐だって意識して食べられる人なんて、どれくらいいるのだろうか?」。

 1話完結で事件が解決していくが、1話に出演した夫の浮気調査を依頼したおとなしい主婦(小池栄子)は、殺人鬼マリアとなり、2話からの殺人に手を加えていくため、物語のキーマンとなる。この主婦が覚醒した理由は、明智五郎の「思うように生きたらいい」という言葉。そのことに責任を感じた明智五郎は、マリアの暴走を止めるために奮闘する。マリアも、自分を変えてくれた明智五郎を恋しく思い、近くで殺人を行って明智五郎を引き寄せる。この二人の攻防は、1話ごとに繰り広げられる事件の真相とともに、見所となっている。

 事件の真相には、全て〈食〉が関わっている。

 1話でマリアが殺したのは、夫。若い女の家で、ご飯を食べていたことに憤りを感じたため、殺人を犯した。普通に考えれば、若い女の家に行っていたことが理由に思えるが、自分と食べるのは、「美味しいとも言わずにただ食欲を満たすだけの食事」だったのにも関わらず、若い女の家で食べていたのは、スパイスなど遊び心がきいたメニュー。そこに憤りを感じたようだ。

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 2話で志田未来演じるリンゴ農家の娘・古川茜が殺したのは、彼氏とその浮気相手。中学からの同級生だったが、遠距離恋愛になり、彼氏は浮気をしてしまう。それを発見したのが、SNS。浮気相手が、茜が作ったとは知らずに載せたリンゴジャムの写真だった。このドラマの事件の真相は、どれも深いが、この回は、一番色々な感情が入り混じっていたように感じる。

殺害方法は、二人が宿泊しているホテルのブレークファーストに、マリアが毒入りのリンゴジャムをかける。この、リンゴジャムを作ったのが、茜だった。しかし、茜は、彼氏を殺害するつもりはなかった。リンゴジャムに毒を入れたら死んでしまうだろ!と言いたいところだが、自分の彼氏は、リンゴジャムを食べるはずがないと思っていたのだ。その理由は、自分が一生懸命作ったジャムを、「リンゴジャムは飽きた」と言って、いつも腐らせていたから。それなのに、高級ホテルで出されたものは同じものでも食べるんだ…と泣き崩れる。明智五郎は、「料理とはそういうものです。同じ材料、同じ味付けでも、美しい皿やサーブする人間の演出によって、いくらでもその価値は変わる」という励ましなのかよく分からないアドバイスを送る。しかし、恋人には、高級ホテルのジャムよりも、「お前が作ったものが一番だ」と言ってもらいたいものだ。

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 3話の事件は、これまでとは異なり、「仕事」が理由となっている。事件の主役も、武田真治演じるシェフなので男性。グルメサイトで悪評をつけられ、客のキャンセルが相次ぎ、悪評をつけた客を炙り出して、殺害する。このアドバイスを送ったのも、マリア。「仕事」を否定されたことで殺人を犯す男と、「恋愛」で惨めさを感じて殺人を犯す女。殺人を犯してしまったシェフに対して、「僕は悔しい。どうしてあなたほどの人間が、くだらない悪意の前に屈してしまったのか。あなたなら、この狂った街に抗えたはずなのに」と声を掛けた明智五郎。マリアよりも先に、明智五郎に出会っていたなら、シェフは殺人を犯さずに、批判をさせないくらい料理の腕をあげることに尽力したのではないかと思ってしまう。

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 4話は、仲里依紗演じる主婦みどりが起こした事件。真っ白な冷蔵庫を、夫のために作った美味しい料理で埋め尽くすことが夢だったみどり。しかし、夫の母から、度々送られてくる〈お袋の味〉で、冷蔵庫が埋め尽くされてしまう。みどりが作っていた洋食は、「身体に悪い」と言われ、砂糖たっぷりの煮物を「美味しい」と言って食べる夫に嫌気がさしたみどりは、ネットで見つけたサイトに相談をする。そのサイトを運営していたマリアに、「可哀想」と煽られて夫を殺害してしまう。

義母からの好意は、息子からしたら好意だったのかもしれないが、嫁からしたら悪意だったのだろう。一生、〈お袋の味〉に振り回されてしまうような気分になったのではないか。

明智五郎の、「誰かにとっての好意は、誰かにとっては悪意になるのかもしれない」という言葉は、肝に命じていきたいと思う。

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 4話までを振り返って思ったことは、全ての真相が〈深い〉ということ。しかし、人間の中で、〈食〉というものは、切っても切り離せないもの。ともに食事を楽しめることこそが、一番相性がいい相手なのかもしれない。そして、最愛の人が浮気をすること以上に、他の人と〈食〉を楽しむことが、女にとって一番辛いことなのかもしれない。

【ドラマコラム】なぜ、『野ブタ。をプロデュース』を観るとタイムスリップしたような気分になるのか

 中島健人平野紫耀のW主演で注目を集めた『未満警察』が延期となり、代打で再放送されている『野ブタ。をプロデュース』。

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 約15年前に放送され、大ブームとなったドラマ。Twitterがなかった時代のドラマを若者がこぞって観て、Twitterのトレンドを独占するのが、なんとも感慨深い。当時は、何の違和感も感じていなかった細眉や、デコられた携帯、ルーズソックスが時代を感じる。タイトルの中間に”。”を入れているところも、SNSが流行する前ならでは。(今は、#を意識したタイトルが多い)

 野ブタを観ただけで、タイムスリップをしたかのような懐かしさを感じる理由を考えてみた。

 一つは、亀梨和也山下智久が役名の名義でリリースした修二と彰が歌っている主題歌『青春アミーゴ』。

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これを聴いただけで、一気に時代が巻き戻る人は多いのではないだろうか。当時、小学生だった私も、カラオケで歌って、どっちが修二を歌うか、どっちが彰を歌うのかで揉めた思い出がある。一気に時空を巻き戻してくれる【主題歌】は、ドラマを印象付ける上でも、大きな役割を果たしている。

 二つ目は、山下智久演じる彰の雰囲気や、台詞の言い回し。語尾につける「だっちゃ」や、「ど」を「do」と表すなど、一回見たら忘れられないキャラクターだ。漫画原作でも、アニメ原作でもないため、本の原作から想像を働かせ、脚本家やプロデューサー、演者が一からこのキャラクターを作り上げた。彰が話しているところを見ると、懐かしい!と感じる。【流行語】を生み出すのに長けていたのも、この作品の特徴だ。

 2005年の放送時の年齢によるかもしれないが、当時学生だった人も、今はもう大人になっている。当時とは違った思いで、このドラマに思いを馳せることができるのではないだろか。 

 第3話の文化祭の回では、くだらない毎日こそが、一番の青春であるというメッセージが込められていた。「俺ってさ、何やっててもそんな楽しいと思ったことない」と呟いた彰に、野ブタが「楽しいことって後になってみないと分からないんじゃないかな?」と声を掛ける。「何年かしたら思い出すんかな?朝早く三人で人形作ったこととか、夕暮れにススキ摘んだこととか」と問いかける彰。あの頃は楽しかったと思い出すことって、大体、当時は気付かないくらいにくだらないことだったりする。野ブタはきっと、そのことに気付いていたのだ。

 学生時代に戻りたくて、毎年生き霊になって文化祭にやってくる三人組の話も、当時は、文化祭にそんなに思い入れるの?と驚いた。しかし、今になってみると、夏木マリさん演じる佐田香子の、「一生に一回だけだもんね。友達に出会えるのも、意味のないことに夢中になれるのも」という言葉が心に染みる。

 生産性を求められ、それに対価が支払われる大人の社会。文化祭で、意味もなくクラスの出店を出したり、体育祭で戦ったり…そんな、ある意味”くだらないこと”を全力で楽しめるのも学生ならではだ。学生時代は、頑張るのがかっこ悪いと思ってしまったりすることもある。しかし、そんなことを一生懸命楽しめるのも、学生だからなんだよということを、『野ブタ。をプロデュース』が教えてくれているような気がする。

 

【ドラマコラム】原点回帰!『正しいロックバンドの作り方』から読み解く日テレシンドラの在り方

 

  4月20日からスタートした『正しいロックバンドの作り方』。W主演のジャニーズWEST藤井流星と、神山智洋が演じるのは、ロックバンド「悲しみの向こう側」に所属する兄弟。藤井演じる兄のシズマは、グループのリーダー。最大級の音楽フェスである「電撃ロックフェス」に出演するために、グループを引っ張る熱い男。対して、神山演じる弟のテツは、やる気がなくて毒舌。バンドも、人数合わせのために、就職が決まるまでの1年間だけ参加している。夢に向かって一直線な熱い男である兄と、バンドを腰掛程度にしか考えておらず、常に冷静な弟の対比が面白い。

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 ロックバンド「悲しみの向こう側」は、兄弟の他に、栗原類演じるマイペースで協調性のないオギノと、テキトーでノーテンキなコバ(吉田健悟)の4人で形成されている。

 とにかく、この4人のバランスがいい。1話から、本物のバンド仲間かのような会話のテンポが繰り広げられた。シズマがふざけて、コバが乗る。テツが冷静にツッコんだ所に、オギノが爆弾を落とすなど、一人ひとりの役割がきちんと振り分けられているのが、「青春ドラマ」らしい点だ。

 この日テレシンドラ枠は、日本テレビとジェイストームの共同制作であるため、ジャニーズ事務所のタレントが主演を務めている、いわば「ジャニーズドラマ枠」。2017年に、Hey!Say!JUMPの有岡大貴・八乙女光・髙木雄也の3人が主演を務めた『孤食ロボット』を皮切りに、さまざまなジャニーズタレントたちが、ドラマを彩ってきた。

 中でも、大学時代最後の青春を追った『卒業バカメンタリー』や、青春漫画と実際の部活生活とにギャップを感じる『部活、好きじゃなきゃダメですか?』、厳しい校則改正に立ち向かっていく『ブラック校則』などは、青春や仲間、友情といった題材をテーマにしており、”シンドラらしさ”が豊富に取り込まれているように感じる。

 とくに、King &Princeの髙橋海人、岩橋玄樹神宮寺勇太がトリプル主演した『部活、好きじゃなきゃダメですか?』は、高校生活をテーマにしており、掛け合いもリズミカルで、本物の同級生の会話を聞いているかのような爽快感があった。

 この、リズミカルな会話や、青春の疾走感が、シンドラの本来の要素のように思う。『正しいロックバンドの作り方』の前作、『やめるときも、すこやかなるときも』は、シンドラ初のラブストーリーということで注目を集めたが、今作の『正しいロックバンドの作り方』は、まさに原点回帰とも言えるだろう。

 シンドラは、『孤食ロボット』や、『卒業バカメンタリー(藤井と濱田崇裕主演)』など、同じグループ同士で主演をすることもあるが、SexyZoneの佐藤勝利とKing &Princeの髙橋海人がタッグを組んで話題となった『ブラック校則』など、違うグループのメンバーを合体させ、新しい化学反応を見られることも新鮮で面白い。豪華なメンバー同士の共演は、共同制作ならではなのかもしれない。

 『正しいロックバンドの作り方』は、同グループのメンバーのW主演ということで、より、息の合ったコンビが見られることも魅力の一つだ。

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 「電撃ロックフェス」という一つの目標に向かって、切磋琢磨していく。しかも、題材は、青春感満載のバンド。2話までは、いい雰囲気で進んできたが、3話から、早速暗雲が立ち込める。4人のメンバーは、これから、どんな風にぶつかり合って、笑い合って、一つになっていくのだろう。このドラマが、「青春×ジャニーズ」のシンドラらしさを体現していくのかもしれない。