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【ドラマコラム】究極の二択の連続『朝ドラエール』恋愛は人を強くするのか?

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 これまで、裕一の音楽家になるまでの過程や、音の歌手になりたい理由などがフューチャーされていた『エール』。しかし、音が裕一にファンレターを送ったことから、二人は恋に落ちる。「恋」と「夢」の狭間で揺れる二人の姿が印象的となってきた。第6週ではそれが顕著となり、二人の恋路にさまざまな試練が襲う。

 裕一は、ロンドン留学を控えて夢に向かってまっしぐらだったはずだった。しかし、音と出会い、次第に恋にのめり込んでいく。裕一が度々訴える、「音がいなければ曲が書けない」という言葉。音がいなくても曲を書けていたはずなのに、どうして恋をしたら、音なしでは戦えなくなってしまうのだろう。

 現実にも、このようなことは起こりうる。一人でも生きて来られたはずなのに、誰かと出会って恋をする。その相手と別れた瞬間、どうやって生活してきたのかも分からないほどになってしまう。そう考えると、恋は人を強くするものなのか、弱くするものなのか分からない。

 裕一は、類い稀な才能を持っているはずだった。小さい頃から、どんどん曲を書いていたはずだ。しかし、音と出会ってからの裕一は、音と上手く行かなくなると、「あなたがいないと曲が書けない」と言うほど弱くなってしまう。音がいたから曲を書けた訳ではないのに。裕一は、音と出会って、強くなった訳ではない。むしろ、音と出会ったから弱くなれたのかもしれない。自分一人で戦っていたものを、音の存在が支えとなって、弱くなれた。しかし、それに慣れてしまうと、再び相手がいなくなった時に、その荷物を一人で抱えられなくなってしまう。裕一は、その状態に陥ってしまったのだろう。そうなると、音がいなくなることに、恐怖心を抱えてしまう。絶対に切れない約束が欲しい。そう思って結婚に踏み切ったのかもしれない。

 結婚を反対する、裕一の母の気持ちも、とてもよく分かる。「外国に音楽を勉強しに行く。そこに結婚は必要?」というのも、真っ当な問いかけだ。「力の源なんだ」と返した裕一の気持ちも分かる。音のことを批判され、「唯一信頼できる人なんだ」と言ってしまった裕一が、なんともリアルだ。それに、「唯一って何だよ。家族のことは信用していないのかよ。周りの愛を当たり前だと思うなよ」と母が言えない気持ちを代弁した弟も、良かった。また、裕一が音楽の道へと進むきっかけを与えた藤堂先生の「本気で何かを成し遂げたいなら、何かを捨てなければならない」という言葉は、恋愛で染まっている裕一の頭の中を、一気に現実へ引き戻したんだろう。

 その言葉を受けて、裕一は音へ「別れてください 夢を選びます」と別れを告げた。

 「夢」と「恋愛」。恋愛は、夢を追う上での支えとなるのか?それとも、足かせとなるのか。当の本人は、支えとなっていると思い、周囲の人は、足かせになっていると感じると思う。つまり、この時、裕一以外の人は、恋が夢に突き進むための障害であると考えていたのだ。しかし、その障害を乗り越えるために必要だったのもまた、音からの愛だった。音との出会いによって生じてしまった障害を乗り越えるために音が必要だと考えると、一見矛盾しているように思えるが、恋愛とはそういうものなのかもしれない。