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【ドラマコラム】自由って冷たいようで温かい 『やめるときも、すこやかなるときも』のストーリーが教える本当の思いやり

 

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9話で印象的だったシーンは、ずっと家に縛られ続けてきた桜子(奈緒)が家族から解放されるシーンだ。

 

父が母に振るう暴力。しかし、「嫌だ」と言えない母。また、父は無職のため桜子は自分の稼ぎで家を支えていた。桜子はそんな家に嫌気をさしながらも 、「自分がいなきゃこの家は成り立たない」と感じ、実家から離れられないでいる。

 

しかし、今話。壱晴(藤ヶ谷太輔)との別れに落ち込み寝込む桜子に対し、母が「お父さんのことや家のことが気になっているなら、前にも話したけど心配しなくていいのよ」と語りかける。桜子は、暴力を振るい稼ぎもなく飲み歩いてばかりの父を抱え、「心配しなくていいのよ」と言われたって…という顔を浮かべる。

 

「お母さん、桜子には幸せになって欲しいのよ」と続ける母に被せるように、「結婚しないと幸せになれないの?」と問いかける桜子。

この「結婚しないと幸せになれないの?」の問いかけには、失恋した後のショックさと、家庭というものに憧れを持てない心情が入り交じっていたのだろう。

「押し付けないでよ!自分は大して幸せでもないくせに!私お母さんみたいになりたくない!」と罵声を浴びせる桜子に、「今までごめんね。お母さん、桜子に甘えるのはやめにする」と言い切る母。いきなりの宣言に戸惑う顔を浮かべる桜子に、「お姉ちゃんをもう解放させてあげて欲しいって言われたの」と、桜子の妹が同居したいと言っていることを話す。

 

「私、追い出されるの?」と言った、桜子の表情が印象深い。''早くこんな家を出たい''と思っていたはずなのに、いきなり解放されると戸惑う。''頼られるのが面倒くさい''そう思っていたはずなのに、頼らないと言われると寂しくなる。この時の、「解放させてあげたい」の言葉は、桜子にとっては温かく感じたのだろうか。それとも冷たく感じたのだろうか。きっと後者だろう。しかし、本当に愛情がこもっているのは「束縛」し続けることよりも、「自由」にさせてあげることだと思う。このドラマの中でも、桜子を「束縛」し続けた方が、両親はラクに生きられる。しかし、「自由」を与えてあげることは深い愛情のように感じた。

 

実家を巣立ち、一人暮らしを始めた桜子が、「自分が支えているつもりだったけど、私は私であの家に依存してたんだなって」と意外なセリフを口にするシーンがある。ずっと縛られていたものが、急に解放されてしまうと誰しもが戸惑うものなのだろう。

 

「自由」を与えるタイミング。そして、「自由」こそ本物の愛情なのだということをこのドラマが教えてくれた気がする。

 

■放送情報
『やめるときも、すこやかなるときも』
日本テレビにて、毎週月曜深夜24:59〜放送中(Huluでも配信)
出演:藤ヶ谷太輔奈緒、五関晃一、火野正平金澤美穂浅見姫香、中井友望、遠山俊也手塚理美
原作:窪美澄『やめるときも、すこやかなるときも』(集英社文庫刊)
脚本:桑村さや香
演出:小室直子
音楽:赤い靴
編成企画:田中宏史、川口信洋
チーフプロデューサー:福士睦
企画プロデューサー:⻑松谷太郎
プロデューサー:能勢荘志、高橋淳之介(「高」の正式表記はハシゴダカ)、松山雅則
制作プロダクション:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビジェイ・ストーム
(c)NTV・J Storm
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/tomoniikiru/
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