【ドラマコラム】なぜ、『野ブタ。をプロデュース』を観るとタイムスリップしたような気分になるのか
中島健人と平野紫耀のW主演で注目を集めた『未満警察』が延期となり、代打で再放送されている『野ブタ。をプロデュース』。
約15年前に放送され、大ブームとなったドラマ。Twitterがなかった時代のドラマを若者がこぞって観て、Twitterのトレンドを独占するのが、なんとも感慨深い。当時は、何の違和感も感じていなかった細眉や、デコられた携帯、ルーズソックスが時代を感じる。タイトルの中間に”。”を入れているところも、SNSが流行する前ならでは。(今は、#を意識したタイトルが多い)
野ブタを観ただけで、タイムスリップをしたかのような懐かしさを感じる理由を考えてみた。
一つは、亀梨和也と山下智久が役名の名義でリリースした修二と彰が歌っている主題歌『青春アミーゴ』。
これを聴いただけで、一気に時代が巻き戻る人は多いのではないだろうか。当時、小学生だった私も、カラオケで歌って、どっちが修二を歌うか、どっちが彰を歌うのかで揉めた思い出がある。一気に時空を巻き戻してくれる【主題歌】は、ドラマを印象付ける上でも、大きな役割を果たしている。
二つ目は、山下智久演じる彰の雰囲気や、台詞の言い回し。語尾につける「だっちゃ」や、「ど」を「do」と表すなど、一回見たら忘れられないキャラクターだ。漫画原作でも、アニメ原作でもないため、本の原作から想像を働かせ、脚本家やプロデューサー、演者が一からこのキャラクターを作り上げた。彰が話しているところを見ると、懐かしい!と感じる。【流行語】を生み出すのに長けていたのも、この作品の特徴だ。
野ブタ3話。「コンコン」「バイセコー」「だっちゃ」「do
— かなぴす/𝘄𝗿𝗶𝘁𝗲𝗿 (@kanawink) 2020年5月2日
の辺が?」など、とにかく流行する語録を生み出すのに長けているドラマ。脚本が、木皿泉さんとのことで納得。それにしても、山Pの役作り、凄すぎません?#野ブタをプロデュース
2005年の放送時の年齢によるかもしれないが、当時学生だった人も、今はもう大人になっている。当時とは違った思いで、このドラマに思いを馳せることができるのではないだろか。
青春を過ごす前に憧れながら観たドラマを、青春を終えた後に懐かしみながら観るってなんだか最高。 #野ブタをプロデュース
— かなぴす/𝘄𝗿𝗶𝘁𝗲𝗿 (@kanawink) 2020年5月2日
第3話の文化祭の回では、くだらない毎日こそが、一番の青春であるというメッセージが込められていた。「俺ってさ、何やっててもそんな楽しいと思ったことない」と呟いた彰に、野ブタが「楽しいことって後になってみないと分からないんじゃないかな?」と声を掛ける。「何年かしたら思い出すんかな?朝早く三人で人形作ったこととか、夕暮れにススキ摘んだこととか」と問いかける彰。あの頃は楽しかったと思い出すことって、大体、当時は気付かないくらいにくだらないことだったりする。野ブタはきっと、そのことに気付いていたのだ。
学生時代に戻りたくて、毎年生き霊になって文化祭にやってくる三人組の話も、当時は、文化祭にそんなに思い入れるの?と驚いた。しかし、今になってみると、夏木マリさん演じる佐田香子の、「一生に一回だけだもんね。友達に出会えるのも、意味のないことに夢中になれるのも」という言葉が心に染みる。
生産性を求められ、それに対価が支払われる大人の社会。文化祭で、意味もなくクラスの出店を出したり、体育祭で戦ったり…そんな、ある意味”くだらないこと”を全力で楽しめるのも学生ならではだ。学生時代は、頑張るのがかっこ悪いと思ってしまったりすることもある。しかし、そんなことを一生懸命楽しめるのも、学生だからなんだよということを、『野ブタ。をプロデュース』が教えてくれているような気がする。