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【ドラマコラム】『エール』強気な音を育てた父・安隆の心に響く言葉たち

 

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  NHK連続テレビ小説「エール」は、昨日までとはガラッと変わり、古山裕一の妻・関内音の幼少期を辿る話が始まった。第2週にして、主人公である裕一が回想以外で登場しないというあたりから、「エール」における音の存在の大きさを感じさせる。

  父・関内安隆(光石研)の仕事に着いて行き、福島の川俣を訪ねた音(清水香帆)は、教会に立ち寄り聖歌を歌う人たちを見て、「私も歌いたい」と父にねだる。音は、父に付いて来てもらおうとするが、父は、「自分で行きなさい、音」と突き放す。しかし、その後すぐに「大丈夫、なんとかなるから」と優しい笑顔を浮かべる。

  このように自立を促しながらも、温かく励ます父の言葉が、裕一を支え続けた音の基盤を作ったのだろう。この時、勇気を出して聖歌隊の中に飛び込み、歌っている音を見て、裕一(石田星空)は一目惚れをする。父の「なんとかなるから」の一言がなければ、裕一の目に止まることもなかったかもしれないと考えると、父の言葉の大きさを改めて感じる。「初めは恥ずかしかったけど、やって良かった」と言う音の嬉しそうな言葉も、もし父が付き添ってあげていたら出てこなかったかもしれない。こうして、音は強くなっていったのだろう。「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいい」という父の教えは、音の胸の中にずっと残っているはずだ。

  クラスの演劇でかぐや姫をすることになり、主役をやりたいと思っていた音。しかし、お爺さん役になってしまい、不貞腐れていた時にかけた父の言葉も印象深い。子供は、まだ狭い世界の範囲でしか物事を見れていない場合が多い。そこで父は、「でも、音がかぐや姫だったら、お爺さん役は誰か他の人がやるんだよな?」と問いかける。この時の、音のハッとした顔が忘れられない。この父の一言で、小学生ながら、周りを見る目が養われたに違いない。

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  続いて、「その(お爺さん役の)人が嫌々演じていたらどう思う?」と尋ね、音のやる気を引き出す。音は、「ちゃんとしてって思う」と、素直に答える。すると、「人にはみんな役割がある。誰もが主役をやれるわけじゃない。だねど、主役だけでもお芝居はできん。必ず、それを支える人がいるんだ」と語りかける。

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  そう教えたあとに、「今回は残念だった。だけど、なんの役だろうと、お父さん楽しみだよ」と笑顔で言う父に、音は満面の笑みを見せる。ここで、「嘘ばっか!」とふざけるところが音らしい。

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  「必ず、それを支える人がいるんだ」という言葉は、裕一を、生涯叱咤激励し続けた音の人生を見越したかようだ。音の父は、時には突き放し、時には温かく、ずっと音を見守り続けたのだろう。音の父・安隆の言葉が、私たちの胸もじんわりと温かくしてくれる。

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